閑話休題 その10
今時の 石原 利矩
歳を取ると若者の言動、振るまいなどが気になり出す。若者の言葉使いは乱れている。礼儀を知らない。傍若無人である、などなど。いきおい批判することになる。すると彼等に煙たがれる。 流行語をいち早く取り入れるのは若者である。老人は使い慣れた言葉を言い直すのは面倒だ。これも勘に触る。敬語などは大人でも難しい。それを若者が使えないからと言って怒る。返信ハガキの「御中」や「ご芳名」などの使い方を知らない。そのまま投函されて戻ってくる。 私の気になる言葉は日本語の中に外来語がやたら多く使われることだ。これは言葉は流動的で変化していくものであるという認識はある程度抱いてはいるが、最近よく耳にするのは「~の方がベターです」という言い方だ。これは日本語の「良い」の比較級だ。「より良い」という言葉がちゃんとあるのにである。二つのものを並べて「~の方がベストです」と言ったりされると「あんた、最上級は三つ以上なきゃ使えないよ」と言いたくなる。。 私は音楽大学で三十数年フルートを教えてきた。クラスの生徒は一年生から四年生までが混在していた。上級生は下級生のことを世の中の大人のように新入生の態度が気になる。最近の新入生は自分たちと感覚が違うと言う。そして、新入生にけちをつける。二、三年しか違わないのにである。面白いことにこのように言われていた新入生がいざ上級生になると同様なことを言い出す。 私はこんなことをずっと見続けていた。老人が若者にけちをつけるのは今に始まったことではない。ギリシャ時代のパピルスにすでに書かれていたと言う。その後の文学作品でも同様のことが書かれている。 人間、本質的にはあまり進歩していない証拠かも知れない。 |